近代経済学において有名な学者にシュンペーターがいる。シュンペーターは、経済発展の原因にイノベーションを挙げた。イノベーションを和訳すると技術革新となる。技術進歩や技術革新は生産技術の高度化と総称されるのだが、生産技術の高度化は生産性を高めるので、生産関数をシフトさせる要因となる。※1
シュンペーターの掲げたイノベーションがどのようなものであるのかを簡潔にまとめてみることとする。※2
ケインズは需要に注目したのに対し、シュンペーターは供給側の活動に注目した。※3アメリカの経済学者であるシュンペーターは、経済発展論や景気変動論および経済学説史において卓越した業績を残した。とりわけ、イノベーションという概念を用いることで、経済発展論や景気変動論を説明した。※3
技術革新の滞る市場経済は静態均衡に落ち着く傾向にある。しかし、企業がたえず技術革新を成し遂げることで企業収益を上げているのが現実だ。この場合の技術革新とは、新商品・新生産技術・新販売方法または新組織などの導入のことである。シュンペーターは、これらを動態的不均衡にある、と見なしたのだ。また、シュンペーターはシュンペーター仮説を提唱している。これは、技術革新における大企業の優位性を主張した説である。※5
景気変動の波は4種類が提唱されている。キッチン・ジュグラー・クズネッツ・コンドラチェフだ。4種類のなかで、主循環と見なされているのがジュグラーの波である。平均10年の波であり、波の変動の原因は設備投資にあるとされている。※6
最も長い景気変動の波であるコンドラチェフの波には、その説に疑問視する経済学者も存在する。コンドラチェフの波の原因は諸説挙げられているが、現在までに確認された景気変動の長波が大きな技術革新の時期と重なるため技術革新が有力視されているのだ。つまり、シュンペーターの説明が当てはまるとされるに至った。※7
景気の変動は、好況・後退・不況・回復・好況を繰り返す。※7シュンペーターが提唱する経済発展の原因は技術革新だが、技術革新を原因とする波の変化はコンドラチェフの波以外にも影響していると考えられる。設備投資が原因のジュグラーの波だ。技術革新には設備投資が必要不可欠であるというのがその理由である。在庫循環が原因のキチンの波が景気後退時に変動すると仮定できるならば、おそらく回復期の技術革新への設備投資によりジュグラーの波に変動が見られるのであろう。更に、コンドラチェフの波に関しては、世界を変えるようなイノベーションにより波が変動するので、イノベーションが回復期から好況期への橋渡し役をするものと考えられる。
※1マクロ経済学第2版 浅子和美 加納悟 倉澤資成p284la I.1〜l.5 株式会社新世社ゼミナール経済学入門
※2.3 奥村薫 決定版!倫理、政治・経済の点数が面白いほどとれる本(株)中経出版 2011年6月8日p.295
※4 有斐閣経済辞典 シュンペーターp.578
※5有斐閣経済辞典 シュンペーターの動態説p.5783
※6 2008年9月8日日本経済新聞社福岡正夫p.447l.25〜l.28
※7 2008年9月8日日本経済新聞社福岡正夫p.448l.9〜l.20