科学哲学とは何か

 科学哲学と聞いてもなかなか詳しく知っている人はいないだろう。科学哲学は日本ではあまり盛んに行われておらず、日本語の資料も少ない学問である。科学哲学は科学に対して疑問を投げかける学問であり、科学が興隆し社会が科学に依存していく最中に必要な学問である。

 科学哲学の定義は難しく、一口に言っても広い学問である。簡単に説明すると、科学で用いられている分析や科学者にとって当たり前の前提について問いただす学問である。例えば、科学は見えないものを扱うことが多いが、目に見えない以上それが存在すると言っていいのかと議論する。また、目に見えないものを元にする科学理論が正しいのかどうかにも疑問を投げかける。さらに、科学と非科学との差を議論する。宗教や哲学、占いなどと科学はどうやって線を引いているのかを考える。また、個別の科学に対して問題も投げかけている。例えば、物理学に関しては特に量子力学に関して疑問を投げかけている。量子力学は古典物理学の常識を覆し、一般に生きている感覚からはかけ離れているような内容ながらも、量子力学なしに現在の物理学は存在しえない。感覚からかけ離れている、目にも見えない理論に対して哲学者たちは議論している。その中でも実在論について説明する。実在論とは、科学的に扱われる目に見えないが存在するとされるもの、例えば電子や中性子が存在するかを議論する。実在論者は、見えなくても存在すると考える。反実在論者は、目に見えないものをわざわざ存在すると考える必要はないと主張する。実在論側は、存在すると考える理由として「奇跡論法」を上げる。奇跡論法とは、もし観察不能な対象が存在しないのに、存在すると仮定して作られた理論が成功を収めるならばそれは奇跡であるが、奇跡と考えるのは論理的ではないので普通に存在すると考える、というものである。反実在論者は「悲観的帰納法」を主張する。これは、かつて成功を収めていた科学理論も間違っていた例がたくさんある。だから現在成功している科学理論も間違っているだろう、と考えるものである。間違っていた例として、化学におけるフロギストン説がある。かつては燃える物はすべてフロギストンを持っていて、燃焼したときに出てくるものがフロギストンという物質であると考えられていたが、現在は否定されている。このように、誤った理論でも何世紀にもわたって採用されている例があるのだから、現在うまくいっているからといって正しいとは言えないと主張する。

 科学哲学はなじみがなく、こんなことをわざわざ議論することに対して驚いた人々もいるかもしれない。先ほど書いたように、正しいとされていた科学が後から間違っていた、とされた例は紹介しきれないほどたくさんある。最近は水素水など、科学的な根拠に乏しい商品も多くある。科学について懐疑的な目を持つのも大事である。

参考文献

・サミール・オカーシャ、科学哲学、岩波書店、2016、12-14, 34, 73

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