イスラム教はなぜテロを起こすのか
「イスラム主義勢力がテロを起こした」という話はよく耳にするだろう。その例は枚挙に暇がないが、2021年9月にはアフガニスタンで爆破テロが起こるなど、中東を中心に多くのテロが起きている。自爆テロを始めとするテロ行為、はイスラム教の教えを拡大解釈することで正しい行為とされる。そのような宗教の中身を見ていく。
イスラム教は7世紀ごろムハンマドによって創始された。ムハンマドは、唯一神アッラーの教えを預かり伝える者であると自覚し、預言者として目覚め布教に努めた。当時のアラビア半島での教えは多神教で、偶像崇拝を行っていたが、ムハンマドはそれを否定した。偶像崇拝の禁止とは、アッラーおよびムハンマドなど神や預言者の像や絵画などを作って信仰することを認めないということである。この世界の神はアッラー一人であるという唯一神の教えだが、この神はキリスト教やユダヤ教の神と同一のものとして考えられている。また、教典として「コーラン」があり、これはアッラーからムハンマドが授かった教えが記されているとされる。サウジアラビアではこのコーランが憲法とされている。このコーランに厳格な国家として作られつつある共同体が「イスラム国」である。この教典も、キリスト教やユダヤ教の聖書の内容と一致する部分も見られる。イスラム教の中にも宗派があり、主にスンナ派とシーア派とに分かれ、後者が少数派である。基本的にはシーア派の方が過激派とされ、戒律や宗教の実践にも厳しいとされている。この二つの宗派は、ムハンマドの後継者を誰とするかで対立したことで分かれた。さて、なぜテロ行為が多いのかについてだが、イスラム教の教えの一つに「ジハード」と呼ばれるものがある。これは「聖戦」と訳されるが、本来は「神の道のために努力すること」を指している。本来はイスラム教を信仰しない者からの迫害に対し共同体を守るための戦いや、自分自身との闘いのことをジハードと呼び、無用な敵意や攻撃はコーランの中で戒められている。しかし、この戒めの部分ではなく、他宗教との戦いのことばかりに目を向け、聖典で定められた「合法的行為」としてテロ行為が行われてしまうのである。
コーランでは、他宗教から攻撃を受けた時、自分たちを守るための戦いは義務として書かれているが、自ら攻撃に行くことは許されているわけではない。しかし、なぜイスラム教徒を名乗る人々がテロ行為に走るのかは知っていただけただろう。ある意味で、合法的な行為として行われているのである。
参考文献
・第一学習社編集部、テオーリア 最新倫理資料集、第一学習社、2017、50-53
・渡部哲治、新倫理 新訂版、清水書院、2017、48-50
・水野翔太、読売新聞オンライン、「タリバン狙い「イスラム国」が爆破テロ…報復の応酬に発展する恐れ」、https://www.yomiuri.co.jp/world/20210920-OYT1T50127/