対象喪失の意味
対象喪失とは、愛情や依存の対象である人物、所有物、環境などといった大事なものを、失う体験のこと。死別や別離のできごとが、対象喪失の体験となる。対象喪失は、人生で何度も体験するできごとであるため、複合的なものとなることもある。
喪失体験は、悲哀の心理が発生する原因となる。たとえば、乳幼児にとっては、母親と分離することが、パニックを引きおこす原因となる。このような、乳幼児期の分離不安は、成人となってからの喪失体験と関係することもある。
また、悲哀は、悲しみや怒りのほかにも、故人にたいする没頭などといった反応も含んでいる、身体反応である。この反応は短時間で終結する。このことは、継続的に抑うつ状態が続く、うつ病とは異なる特徴である。
対象喪失による危機を乗り越えるためには、悲嘆や喪の作業が必要となる。J.M.ボウルビィは、喪の作業を『麻痺/無感覚』『否認・抗議』『絶望・失意』『離脱・再建』という四段階のプロセスで説明している。これらのうち、三番目となる『否認・抗議』の段階で喪失を受け入れて『離脱・再建』では、立ち直るために努力するようになるのである。
社会的規範として、喪の儀式は、悲嘆の反応を表出させたものであるといわれている。
例文
対象喪失の克服が正常におこなわれないような場合には、うつ病に陥るおそれがある。