自伝的記憶の意味
自伝的記憶とは、自分自身がこれまでの人生で、主体的に経験してきた記憶のことを指す。自伝的記憶は、過去の記憶の中でも、本人のアイデンティティが形成されるような重要な記憶であり、そのエピソードの中には、自分が存在・登場することが多いという特徴をもつ。自分についてのエピソード記憶と、一般的な知識についての記憶を結びつけることで、自伝的記憶の形成、すなわち、アイデンティティが形成されていく。
自伝的記憶は、10歳から30歳をピークに、想起する量が増えて、少し減少したのち、自伝的記憶を想起した自分の年齢に向かって増加する傾向がある。10代~30代というのは、本人のアイデンティティ形成に関わるエピソードが多く、当該時期の記憶が残りやすいという特徴からくる。3歳以前の記憶が曖昧なのは、逆に、自己認識が曖昧であることに由来している。
また、自伝的記憶は、同じ出来事でも、思い出すときの環境や自身の境遇によって、同じ内容でもその受け止め方が変わることから、カウンセリングの現場でも活用される心理療法のひとつだ。
例文
・自伝的記憶は、エピソード記憶のひとつである。
・自伝的記憶は、本人のアイデンティティ形成に大きく寄与した出来事が影響する。
・自伝的記憶は、同じ出来事でも、思い出す時の外的要因によって、同じ内容でも受け止め方が変化する。
・3歳以前の記憶が想起されにくい幼児性健忘も、自伝的記憶を理解するうえで大切な要素といえる。