対人認知の意味
対人認知とは、個人が、他者を理解しようとするはたらきのこと。人は、他者の外見や表情、言動などから、その他者の内面を知ろうとする。このはたらきは、他者との関係や、社会的環境への適応のために必要な、社会的行動の基礎である。
表情の認知について、エクマンは、R.S.ウッドワースが提唱した6感情の表情(愛・幸福・喜び、驚き、苦しみ・恐れ、決意・怒り、嫌悪、軽蔑)にたいする判断を、アメリカ、ブラジル、チリ、アルゼンチン、日本という5か国で検討した。その結果、それらの5か国すべてにおいて、一致した判断を得られた。
他者の性格(パーソナリティ)を知ろうとする認知は、外見的なことだけではなく、その他者にたいする印象をもととして判断される。これを、印象形成とよぶ。
ただし、印象形成が歪められる要因もある。他者の印象が歪んでしまう要因は「よい」「悪い」という印象で判断する傾向(ハロー効果)や、過去の経験から2つの特性を結びつける傾向(論理的錯誤)、他者の望ましい特徴だけを過大評価する傾向(寛大効果)などがある。それらは、対人認知バイアスとよばれている。
例文
○人間関係がうまくいくようにするためには、自己の対人認知バイアスに気づくことが大切だ。
○児童の対人認知を発達させることは、教育における課題だ。
○あの教授が教える対人認知論は、日常生活にも役立つ。
○対人認知の過程には、その対象となる他者だけではなく、認知者のほうがもつ態度も影響を与える。